2021年01月15日
【神奈川県電気工事工業組合の機関誌 転載】 2020年4月施行改正民法で注意したい請負契約約款(U)
LTRでは、本ブログを通して経営者の皆さまのお役に立てる情報を定期的に発信していきます。
令和2年4月から改正民法が施行されました。
この改正について、鈴木洋平弁護士が神奈川県電気工事工業組合の機関誌 ニュース「かながわ」No.228に「2020年4月施行改正民法で注意したい請負契約約款(U)」と題した記事を寄稿しておりますので、ご紹介いたします。
※「2020年4月施行改正民法で注意したい請負契約約款(T)」はこちら
Q)工事の途中で些細な不手際があったとして、契約を全部解除すると言われたのですが?
A)改正前の民法では、仕事の目的物に瑕疵があっても「契約をした目的を達することができないとき」に解除できるとされ、「建物その他の土地の工作物」は解除できないとされていました。改正法では、瑕疵が「軽微であるとき」のみ解除できないとされ、解除ができる範囲が広くなったと言えるでしょう。
そこで、契約約款で注意すべきこととして、解除の範囲を改正前民法のように狭くしておくか否かを検討する必要があります。
中央建設審議会の約款では、解除の範囲は改正法のとおりに広くし、「不履行がこの契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは」解除できないとし、それ以外の場合には解除できるとしています。
Q)解除できる場合が広がるということですが、途中まで仕上がっているのにその分の代金を請求できないのでしょうか?
A)この点は、改正前でも裁判例において、中途工事でも「注文者が受ける利益の割合に応じて報酬」を請求できるとされており、改正法でこれが条文化されただけなので変更はありません。ただし、このままですと中途工事の成果物としての価値相当分の報酬しか請求できないことになり、発注した材料であっても注文者へ納品されてないものについては、材料の代金の請求ができません。
そこで、契約約款で注意すべきこととして、仕事の途中での解除の場合の精算の仕方を定めておくことが必要です。
中央建設審議会の約款では、工事出来高だけでなく「検査済の工事材料及び建築設備の機器」の範囲まで請求できるとしています。
なお、解除がもっぱら注文者の都合によるときは、請負代金の全額を請求できます。ただし、施工会社の側で工事しないことで免れた費用(材料費や人件費など)は除かれます。この部分は約款で定めなくてもこのように取り扱われますが、注文者の不意打ちにならないためにも明記した方が良いでしょう。