2020年12月11日
【神奈川県電気工事工業組合の機関誌 転載】 2020年4月施行改正民法で注意したい請負契約約款(T)
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令和2年4月から改正民法が施行されました。
この改正について、鈴木洋平弁護士が神奈川県電気工事工業組合の機関誌 ニュース「かながわ」No.227に「2020年4月施行改正民法で注意したい請負契約約款(T)」と題した記事を寄稿しておりますので、ご紹介いたします。
Q)2020年4月から改正民法が施行されたと聞きましたが?
A)これまでの民法は明治29(1896)年に制定されてから大きな改正がありませんでしたので、令和2(2020)年4月施行の改正民法は約120年ぶりの大改正と言われています。
今回は、電気工事の請負契約にあたって、注意しておきたいものをあげていきます。
Q)これまで個人の邸宅の場合、契約書を交わしていませんでしたが、問題はありますか?
A)建設業法では契約書を交わすことを義務付けていますが、仮に契約書がないとしても契約は有効に成立します(行政処分の対象とは別途なり得ます)。このため、小さな工事や単発の請負の場合には、契約書を交わさないで行う工事も多々あったことと存じます。
ただし、民法改正で注意が必要です。以前の民法では工事に不具合があったときの責任期間は「引渡し又は工事が終了した時から1年」とされていましたところ、改正法では、発注者が不具合を「知ってから1年」(最大で引渡し又は工事が終了した時から10年)となりました。
つまり、契約書を交わして、補修工事の期間を「引渡しから1年」などと定めておかないと長期間の責任を負うことになります。もちろん、工事自体は適切に行われており、10年後の不具合は経年劣化によるものだとすれば責任を負うことはありませんが、経年劣化か仕事の不手際かについて争いを生じさせるきっかけとなりかねませんので、契約書はなくとも、補修工事期間については覚書や保証書等で確認する必要があると言えます。
Q)補修工事について、大げさな補修を求める発注者に対して、どうすれば良いですか?
A)昨今はインターネットで流される情報も多岐に亘っており、そこで仕入れた情報に基づいて不具合があるとして発注者から過大な補修工事を要求されることも出てきています。
以前の民法では、「不具合が重要でなく+補修に過分の費用を要する」ときは補修しなくて良いとされていましたが、改正でこれが削除されました。つまり、補修には過分の費用を要するものであっても、不具合が重要なときは、補修が必要とされました。
その代わりに、改正法では、発注者に不相当な負担がないのであれば請負人の方で補修の方法を定めることができるとされましたが、大げさな補修を求める発注者と折り合いが付かず請負人の方で定めた補修方法による工事に着工できない可能性があります。
そこで、改正後も改正前民法と同様の内容の規定を契約約款に盛り込んでおくと良いでしょう。(中央建設審議会の約款などでは改正後も「過分の費用を要するときは、発注者は履行の追完を請求することができない」としています。審議会のホームページでダウンロードができます)