2020年09月16日

【神奈川県電気工事工業組合の機関誌 転載】請負代金・売掛金の回収について知っておきたい基礎知識

LTRでは、本ブログを通して経営者の皆さまのお役に立てる情報を定期的に発信していきます。
令和2年4月から改正民事執行法が施行されました。
この改正について、鈴木洋平弁護士が神奈川県電気工事工業組合の機関誌 ニュース「かながわ」No.225に「民事執行法改正(請負代金・売掛金の回収について知っておきたい基礎知識)」と題した記事を寄稿しておりますので、ご紹介いたします。

Q)2020年4月から強制執行がしやすくなったと聞きましたが?
A)この連載の第4回目(2015年4月)で請負代金の回収のお話しをし、請負代金の回収を求めて裁判で勝ったとしても、強制執行をするためには、債権者の方で、債務者の財産を把握して裁判所に申請しなければならず、不動産であれば登記情報、預貯金であれば金融機関名だけでなく支店名まで、債権であれば請負先売掛先名と発生時期や種類、などが必要であること、これらの情報を把握することは容易なものではないことのお話しをしました。

 このような問題意識を受けて、2020年4月から、判決書など裁判書類を取得している債権者が、これら債務者の財産に関する情報を把握することができるように民事執行法が改正されました。このため前回の連載の続編として、この改正情報をお伝えいたします。


Q)民事執行法改正で債務者のどんな情報を把握できるようになったのですか?
A)まず、財産開示手続についての罰則が、これまでは金30万円の過料のみであったところ、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金とされました。

財産開示手続というのは、債務者を裁判所に呼び出して、質問をすることで、債務者の財産に関する情報を直接債務者本人から回答させるという手続です。債務者が裁判所に出頭しなかったり、嘘の回答をしたときに、罰則を適用するとすることで、債務者へ心理的圧力を与えて回答を促すこととしているのです。これまでは、罰則の内容が金30万円までの過料に過ぎず実効性がなかったので、懲役刑も加えることで回答させやすくしたのです。

次に、金融機関から債務者の預貯金等預入口座の存否に関する情報を、登記所からは債務者の不動産の地番等に関する情報を取得できるようにしました(ただし登記所は準備が間に合わず不動産に関する情報の取得は2年ほど先になるようです)。

さらに、生命身体の侵害による損害賠償請求権や養育費等の扶養に関する債権の取立てについては、市町村と日本年金機構から債務者の勤務先に関する情報を取得できるようにしました。

なお、不動産と勤務先に関する情報の取得には、まず財産開示手続を経てからでなければすることができないとされました。

Q)以前に判決を貰ったのですが取立てができていないものはどうなりますか?
A)この法律改正は、2020年4月より前に取得している判決書等の裁判文書にも適用されます。例えば、同年3月以前に判決を取得したものの、相手方の資産がわからず取立てができないままでいるとしても、同年4月以降は相手方の金融機関に関する情報など取得できる場合があるかもしれません。ご利用を検討してみて下さい。

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