2019年07月08日
【くらしに関する法律知識】遺言が読めない
LTRでは、本ブログを通して皆さまのお役に立てるくらしに関する法律知識・情報を定期的に発信していきます。
今回は「遺言が読めない 」を紹介します。
♦状況
父親が亡くなりました。生前にちゃんと遺言書を書いていたらしく、父親専用の金庫のなかに納められていました。兄弟姉妹たちとの遺産分割はできるだけ父親の意思を尊重して行いたいと思っていますが、案の定、乱筆で内容が把握しづらい箇所がほとんどです。どうすればいいでしょうか?
♦解決法
■乱筆のときは「筆跡鑑定」が必要になることも
判読できない遺言書としては、一般的に次の二つの状態が考えられます。
@自署が乱筆で文字自体が読みにくい場合
A遺言書の破損・摩滅で文字が薄れていて、物理的に読めない場合
今回の問題は、@に匹敵するパターンですね。この場合は、「相続人が遺言書の文字を判読できない」「字が癖字で判読できない」という理由で、「筆跡鑑定」が必要になることもあります。
「筆跡鑑定」であれば判読困難な癖字であっても、草書体または慣用の崩しであれば必ず内容が分かるようになります。仮にまったく判読できない遺言だとしたら、「遺言者の意思表示が完成していないもの」として無効とするしかありません。
「筆跡鑑定」については事案を調停に持ち込み、裁判所の鑑定をあおぐようにするとよいでしょう。もっとも、実際のところは相続人の協議で結論を出して妥協するケースが多いようです。
■遺言者以外による意図的な破棄は相続欠格に相当
「A遺言書の破損・摩滅で文字が薄れていて、物理的に読めない」の場合、これが遺言者以外の相続人や受遺者による意図的な破棄であるときは、その人は相続欠格とされて遺産を受け取る権利を失うことになります。そして、破棄された箇所も遺言としての効力は失われずに有効とされます。
摩滅・汚損していて読めない文字については、「科学的鑑定」で判明させる方法もあります。なお、汚れなどの原因によって判読不可能となっている箇所は無効となります。