2019年05月19日
【くらしに関するトラブル対処法】「亡くなったら渡す」という口頭の約束は?
LTRでは、本ブログを通して皆さまのお役に立てるくらしに関する法律知識・情報を定期的に発信していきます。
今回はトラブル対処法「「亡くなったら渡す」という口頭の約束は?」を紹介します。
<状況>
●相続人…長男・次男
●長男は生前の父親から2000万円の現金を受け取っており、「残りの財産は自分の死後、全て弟に相続させる」という父親の口頭の約束に次男とともに同意
●父親の葬儀後、長男は法定相続分を主張。次男は父親が生前に約束したどおりの内容で相続できるか?
<解決法>
亡くなった方(被相続人)が生前に「あなたに残すから」と伝えたという話はよく耳にしますが、こういった類いの言葉は遺言に当たりません。遺言は書面で残すことが大原則であり、「口約束」では認められないのです。
このケースも、被相続人の言葉は「単なる口約束」であることは確かですが、「全くの無意味」とは言いきれません。被相続人が「贈与の意思を示した」と考えられ、死亡が原因で発生する「死因贈与」として認定される場合もあります。「死因贈与」を認めてもらうためには、「被相続人が言っていたから」と主張するだけではなく、いくつかの条件が必要になります。
@証人の有無
「死因贈与」を主張する本人のほか、実際に見聞きした証人が必要。証人は、被相続人が贈与の意思を示していたことを証言できる人であれば、親族でもご近所の方でも誰であっても問題はありません。
A贈る人と受取人の両名の捺印がある書面
証人がいない場合でも、その事実が証明されていている書面があれば条件を満たしたことになります。財産を贈る人と受け取る人の間で結ばれる「贈与契約」となるため、双方の同意を示すためにも両者の捺印は必須です。
B相続人全員の承諾
たとえば、土地の名義変更。この場合、相続人全員の実印と印鑑証明が必要になることが多く、それらを相続人全員から取得できれば名義変更についての承諾が得られたことになります。したがって、証人がいて、なおかつ相続人全員の承諾が得られれば、「死因贈与」は成立することになります。
以上の条件を踏まえてみると、このケースでは長男自身が証人になることは考えにくく、また贈与契約書も作成されていないことから、「死因贈与」として認められるのは厳しいと思われます。