LTR通信
2022年06月27日 [LTR通信]
【LTR- Voice】2022年4月から18歳で成人に!?
※こちらの記事は「LTR通信2022春夏号」に掲載中です。
発行時(2022年4月上旬時点)の内容となっている旨、ご了承ください。
【LTR- Voice】は、士業(スペシャリスト)であるLTRメンバーが、毎回それぞれの立場からテーマを決め、日々の業務に使える“お役立ち情報”としてお届けするコンテンツです。今回は、弁護士の鈴木 洋平氏による「2022年4月から18歳で成人に!?」の記事をお届けします。どうぞご覧ください。
これまで「年齢二十歳をもって、成年とする。」とされていた「民法」4条が、今年4月1日から「十八歳をもって」と改正施行されました。よって、この日に18歳以上である方(約200万人程度になるようです)は、一斉に成人となりました。
「民法」の成年年齢の見直しは、明治9年以来実に140年ぶりですが、世界的に見ると約9割の国が18歳を成年としています。「民法」の成年年齢とは、親権者の同意がなくても一人で契約などの法律行為ができるようになるという意味で、裏を返せば一人で結んだ契約を取り消すことができないということです。
一方、ギャンブル、飲酒や喫煙などは別の法律で規制されており、こちらはこれまでどおり「20歳未満」の方は禁止され、選挙権については公職選挙法の改正により2016年から18歳に引き下げられています。このように、今回は「民法」の成年年齢の改正であることが重要です。それでは、「民法」の成年年齢が改正されると、何が変わるのか見てみましょう。
@契約…ものを買う、通帳を作る、仕事に就く、カードを使う、アパートを借りる、家を建てたりリフォームする、保証人になる、投資する、交通事故で示談をする、これらはすべて契約です。改正前は、親権者の同意なく未成年者が契約をしても、後に取り消すことができましたが、改正後はできなくなります。自由になる反面、保護もされないことになるのです。スマホで簡単にものを買え、知らぬ間に課金もされる時代、「民法」の成年年齢が18歳になるのを機に改めて注意喚起が必要ですね。
A仕事…仕事をする場合でも、労働契約、請負契約、委任契約などさまざまな形があります。これらも上記と同様です。なお、改正前には、労働契約のときは親権者の同意があっても、後に不利益があれば取消しができましたが、これも改正後はできなくなります。ブラック企業という言葉があるように、労働者に十分な知識や経験がない場合には、安易な労働条件とならないよう注意が必要です。
B遺産分割協議…たとえば、夫が死亡し、妻と子で相続手続を行う場合、つまり親権者と未成年者が遺産分割協議をするとき、現行の「民法」では未成年者に特別代理人を付けなければなりません。このためには、家庭裁判所に申立てを行うなど面倒な手続きが必要となります。私の顧客にも18歳の方がいるので、今年4月に成人になるのを待ってから特別代理人の選任なしで遺産分割協議を成立させる予定です。
C結婚/養子縁組…結婚はこれまで男性18歳、女性16歳以上であれば、未成年であっても父母の同意があれば成立していました。改正後は、男女とも18歳以上であれば、父母の同意なく成立することになります。養子縁組は、改正後は18歳になれば養親になることができ、未成年者を養子とする場合の家庭裁判所の許可も18歳以上の場合は不要となります。
D税金関係…相続税や住民税には未成年者控除という特別な控除が認められていますが、これが18歳に引き下げとなります。また、相続時精算課税など贈与税の特例も、18歳まで適用範囲が広がります。
このように18歳から何でも自由になるように見える「民法」の成年年齢の見直しですが、ここで大事なのは成年になる=責任も伴うということです。「民法」の成年年齢の改正でどんなことが変わるのか、すでに成年の私たちが理解し、早いうちから教えていくことが必要でしょう。(弁護士 鈴木 洋平)
発行時(2022年4月上旬時点)の内容となっている旨、ご了承ください。
【LTR- Voice】は、士業(スペシャリスト)であるLTRメンバーが、毎回それぞれの立場からテーマを決め、日々の業務に使える“お役立ち情報”としてお届けするコンテンツです。今回は、弁護士の鈴木 洋平氏による「2022年4月から18歳で成人に!?」の記事をお届けします。どうぞご覧ください。
成年年齢の引き下げで何が変わる?
これまで「年齢二十歳をもって、成年とする。」とされていた「民法」4条が、今年4月1日から「十八歳をもって」と改正施行されました。よって、この日に18歳以上である方(約200万人程度になるようです)は、一斉に成人となりました。
「民法」の成年年齢の見直しは、明治9年以来実に140年ぶりですが、世界的に見ると約9割の国が18歳を成年としています。「民法」の成年年齢とは、親権者の同意がなくても一人で契約などの法律行為ができるようになるという意味で、裏を返せば一人で結んだ契約を取り消すことができないということです。
一方、ギャンブル、飲酒や喫煙などは別の法律で規制されており、こちらはこれまでどおり「20歳未満」の方は禁止され、選挙権については公職選挙法の改正により2016年から18歳に引き下げられています。このように、今回は「民法」の成年年齢の改正であることが重要です。それでは、「民法」の成年年齢が改正されると、何が変わるのか見てみましょう。
「契約」を結ぶ際に変わること
@契約…ものを買う、通帳を作る、仕事に就く、カードを使う、アパートを借りる、家を建てたりリフォームする、保証人になる、投資する、交通事故で示談をする、これらはすべて契約です。改正前は、親権者の同意なく未成年者が契約をしても、後に取り消すことができましたが、改正後はできなくなります。自由になる反面、保護もされないことになるのです。スマホで簡単にものを買え、知らぬ間に課金もされる時代、「民法」の成年年齢が18歳になるのを機に改めて注意喚起が必要ですね。
A仕事…仕事をする場合でも、労働契約、請負契約、委任契約などさまざまな形があります。これらも上記と同様です。なお、改正前には、労働契約のときは親権者の同意があっても、後に不利益があれば取消しができましたが、これも改正後はできなくなります。ブラック企業という言葉があるように、労働者に十分な知識や経験がない場合には、安易な労働条件とならないよう注意が必要です。
結婚や相続、税金関係はどうなるの?
B遺産分割協議…たとえば、夫が死亡し、妻と子で相続手続を行う場合、つまり親権者と未成年者が遺産分割協議をするとき、現行の「民法」では未成年者に特別代理人を付けなければなりません。このためには、家庭裁判所に申立てを行うなど面倒な手続きが必要となります。私の顧客にも18歳の方がいるので、今年4月に成人になるのを待ってから特別代理人の選任なしで遺産分割協議を成立させる予定です。
C結婚/養子縁組…結婚はこれまで男性18歳、女性16歳以上であれば、未成年であっても父母の同意があれば成立していました。改正後は、男女とも18歳以上であれば、父母の同意なく成立することになります。養子縁組は、改正後は18歳になれば養親になることができ、未成年者を養子とする場合の家庭裁判所の許可も18歳以上の場合は不要となります。
D税金関係…相続税や住民税には未成年者控除という特別な控除が認められていますが、これが18歳に引き下げとなります。また、相続時精算課税など贈与税の特例も、18歳まで適用範囲が広がります。
このように18歳から何でも自由になるように見える「民法」の成年年齢の見直しですが、ここで大事なのは成年になる=責任も伴うということです。「民法」の成年年齢の改正でどんなことが変わるのか、すでに成年の私たちが理解し、早いうちから教えていくことが必要でしょう。(弁護士 鈴木 洋平)