2020年10月09日
新型コロナに関わるトラブル対策〜ファクタリングとABL〜
LTRでは、本ブログを通して経営者の皆さまのお役に立てる情報を定期的に発信していきます。
今回は「新型コロナに関わるトラブル対策〜ファクタリングとABL〜」を紹介します。
こちらの記事は「LTR通信 夏号」に掲載中です。
経済に多大な影響を及ぼした新型コロナウイルス。中でも、給与の減少により困窮する会社員らを狙う犯罪やトラブルは、ますます増加傾向にあります。
今回は、その被害拡大も懸念されている「ファクタリング」「ABL」について、お話しします。
Q1.最近よく聞くファクタリング、ABLとは何ですか?
A1.「ファクタリング」は、売掛や請負代金などの債権を、売却するなどの方法で現金化するサービスです。また、「ABL」は、このような債権を担保にして、借入れするサービスです。最近は新型コロナウイルスの影響で、支払いが滞る債権も増え、即座に現金化したい需要も増えています。そのため、ファクタリングやABLの利用者が一層増加していくものと思われます。
Q2.支払う側(債務者)の了承なく債権を譲渡したり、担保にとることなどできるのでしょうか?
A2.債権の譲渡は支払う側(債務者)の承諾を得ることなく行うことができます。ただし、発注者が公共機関や大手業者の場合、請負代金債権を譲渡禁止にする特約があり、以下のように 注意が必要です。
Q3.弊社がお願いしている下請け業者から内容証明郵便が送られてきて、2ヶ月後に支払予定の金100万円の下請代金を「〇〇ファクター株式会社」へ売却したのでそちらへ支払うように記載されていました。
(1)弊社は、支払いをして問題ないでしょうか?
(2)下請け工事に瑕疵が発覚したので、その分減額したいのですが……。
A3.(1)については、貴社と下請け業者との請負契約で下請代金債権の譲渡を禁止しているか否かで場合を分ける必要があります。
まず、@譲渡を禁止していない場合です。債権の譲渡は自由ですので、下請け業者から下請代金債権を譲渡した旨の通知を受けた貴社は、下請代金を「〇〇ファクター株式会社」へ支払わなければなりません。ただし念のため、通知の内容が本当かどうか、下請け業者に確認しましょう。
次に、A譲渡を禁止している場合です。下請代金債権の譲渡を禁止していることは、ファクタリング業者にとって容易に調査して知りうることですので、貴社は譲渡禁止特約をファクタリング業者に主張できます。しかしながら、2020年4月施行の改正民法によって、ファクタリング業者から貴社に対し「下請け業者へ支払期日のとおりに支払うことを求める」通知をしたのにもかかわらず、貴社が支払期日後も数日経っても下請け業者への支払いを行わない場合には、ファクタリング業者に支払わなければならないとされました。
また、貴社が面倒だと思えば、法務局へ供託して支払いを免れることもできるようになりました(供託金については、正当な譲受人であれば払い戻すことができるため、正当な債権譲渡か否かの判断を法務局が行うことになります。供託できるようにする目的で、譲渡禁止特約を付けることも検討すべきです。)。
なお、下請け業者ではなく、従業員が給料債権をファクタリング業者に売却する事例もあります。しかしながら、給料は労働基準法第24条で従業員本人へ直接支払わなければならないため、譲受人に支払うことはできず注意が必要です(金融庁も2020年3月5日に同様の見解を示しています)。
(2)については、そもそも下請け債権がその程度(瑕疵による減額分を差し引いた程度)しか発生していないものと捉え、ファクタリング業者へ減額を主張できます。(弁護士 鈴木 洋平)
今回は「新型コロナに関わるトラブル対策〜ファクタリングとABL〜」を紹介します。
こちらの記事は「LTR通信 夏号」に掲載中です。
経済に多大な影響を及ぼした新型コロナウイルス。中でも、給与の減少により困窮する会社員らを狙う犯罪やトラブルは、ますます増加傾向にあります。
今回は、その被害拡大も懸念されている「ファクタリング」「ABL」について、お話しします。
Q1.最近よく聞くファクタリング、ABLとは何ですか?
A1.「ファクタリング」は、売掛や請負代金などの債権を、売却するなどの方法で現金化するサービスです。また、「ABL」は、このような債権を担保にして、借入れするサービスです。最近は新型コロナウイルスの影響で、支払いが滞る債権も増え、即座に現金化したい需要も増えています。そのため、ファクタリングやABLの利用者が一層増加していくものと思われます。
Q2.支払う側(債務者)の了承なく債権を譲渡したり、担保にとることなどできるのでしょうか?
A2.債権の譲渡は支払う側(債務者)の承諾を得ることなく行うことができます。ただし、発注者が公共機関や大手業者の場合、請負代金債権を譲渡禁止にする特約があり、以下のように 注意が必要です。
Q3.弊社がお願いしている下請け業者から内容証明郵便が送られてきて、2ヶ月後に支払予定の金100万円の下請代金を「〇〇ファクター株式会社」へ売却したのでそちらへ支払うように記載されていました。
(1)弊社は、支払いをして問題ないでしょうか?
(2)下請け工事に瑕疵が発覚したので、その分減額したいのですが……。
A3.(1)については、貴社と下請け業者との請負契約で下請代金債権の譲渡を禁止しているか否かで場合を分ける必要があります。
まず、@譲渡を禁止していない場合です。債権の譲渡は自由ですので、下請け業者から下請代金債権を譲渡した旨の通知を受けた貴社は、下請代金を「〇〇ファクター株式会社」へ支払わなければなりません。ただし念のため、通知の内容が本当かどうか、下請け業者に確認しましょう。
次に、A譲渡を禁止している場合です。下請代金債権の譲渡を禁止していることは、ファクタリング業者にとって容易に調査して知りうることですので、貴社は譲渡禁止特約をファクタリング業者に主張できます。しかしながら、2020年4月施行の改正民法によって、ファクタリング業者から貴社に対し「下請け業者へ支払期日のとおりに支払うことを求める」通知をしたのにもかかわらず、貴社が支払期日後も数日経っても下請け業者への支払いを行わない場合には、ファクタリング業者に支払わなければならないとされました。
また、貴社が面倒だと思えば、法務局へ供託して支払いを免れることもできるようになりました(供託金については、正当な譲受人であれば払い戻すことができるため、正当な債権譲渡か否かの判断を法務局が行うことになります。供託できるようにする目的で、譲渡禁止特約を付けることも検討すべきです。)。
なお、下請け業者ではなく、従業員が給料債権をファクタリング業者に売却する事例もあります。しかしながら、給料は労働基準法第24条で従業員本人へ直接支払わなければならないため、譲受人に支払うことはできず注意が必要です(金融庁も2020年3月5日に同様の見解を示しています)。
(2)については、そもそも下請け債権がその程度(瑕疵による減額分を差し引いた程度)しか発生していないものと捉え、ファクタリング業者へ減額を主張できます。(弁護士 鈴木 洋平)