LTR通信
2024年05月09日 [LTR通信]
【ハマ街ビト】 (番外編) ミッションは「世界から立ち仕事のつらさをなくす」 身に付けて歩ける椅子=アルケリスは どのようにして生まれたのか?
1967年にプレス金型メーカーとして創立し、現在は『金型部門』『プレス・板金部門』『機械加工部門』『治工具・設備部門』の四つの柱でお客さまのニーズに応えている株式会社ニットー。働く人たちは、“ものづくり”に対して熱い想いを持っており、技術力の高さや設計から量産までをすべて自社内で行っているところも特徴です。
LTR通信の誌面(本編/LTR通信の2024春夏号P6–P7)では、自社における組織づくりのポイントや、人材育成をする上で大事にしていることなどをお聞きしました。
こちらの番外編では、2014年から開発を進め、2018年に販売をスタートした「archelis(アルケリス)」(立ち仕事の負荷を軽減する、電源不要のアシストスーツ)について、詳しくご紹介します。
▶アルケリス株式会社
―まずは、アルケリスの開発に至った経緯を教えていただけますか。
【藤澤】千葉大学フロンティア医工学センター(当時)の川平 洋先生より、「長い時間、立った姿勢で手術をする医師の負担を軽減したい」と相談を受けたんです。その日から一人の技術者として、“皆さんの助けになりたい”という強い想いが湧き、開発を進めることになりました。
―医療業界は、藤澤さんが今まで携わってきた分野とは異なりますよね? 不安な面もあったのではないでしょうか。
【藤澤】はい。医療に関わる開発の経験もゼロですし、「はたして私にできるのか……」という気持ちもありました。そんな中とても有難かったのは、現場(手術)経験がある川平先生からアドバイスをもらえたこと。先生は、実際に内視鏡外科医として手術も手掛けていた方なので、具体的な課題を分かりやすく伝えていただけました。
―それは心強いですね。
【藤澤】手術では、長いと10時間も立ったままの姿勢となります。でも、それを改善するような器具はありませんでした。手術室の中は機器やコード類がある上、移動もするので椅子を置くのも難しい。そこで、 “身につけて歩ける椅子”という発想に至りました。
―なるほど!
【藤澤】現場をよく知る川平先生ならではの発案です。そこから、自社の強みでもある『一貫生産体制』を生かし、試作1号機を作りました。
―社内では、どんなチーム体制で取り組んだのでしょうか?
【藤澤】試作段階ということもあり、基本的に私がメインで動きましたが、加工に関しては各部門で行いました。企画やアイデア出しについては、開発が好きなメンバーに声をかけ、サポートしてもらった形です。
―皆さんそれぞれ得意分野があり、各パートを任せられるのは“ニットーさんならでは”ですね。
【藤澤】その点は、大いに生かせたと思います。ただ実際に開発が進むと、あらゆる問題点が生じ予想以上に大変でした。たとえば、装着する人の体型や装着感の良し悪しには、個人差があります。ある人は『フィット感が良い』と思っても、別の人は違和感を覚えることもあり、計測の難しさも痛感しました。また人の関節の動きは複雑で、動きをさまたげない関節構造の構築も、非常に難しいものでしたね。
―それらの“壁”を、どのように乗り越えていったのでしょうか?
【藤澤】とにかく、『試作品を作り装着してもらう』の流れを繰り返しました。より多くの方に装着してもらえれば、フィードバックの数も増えます。それらを開発に生かしながら、製品の質を少しずつ上げていった形です。
―開発で大変な日々の中、藤澤さんの原動力となったのは?
【藤澤】いくつかありますが、身近で支えてくれたチームメンバーの存在は大きかったですね。アルケリスに関わっていないメンバーでも、打開策のアイデアを出してくれたり、すぐ形にしてくれるなど率先して動いてくれることもありました。
―やはり皆さんは、“ものづくり”に対して熱い想いを持っているんですね。
【藤澤】そうですね。そのおかげで試行錯誤を繰り返しながらも、私自身“ものづくり”の楽しさは忘れず、最後まで挑み続けることができました。また、試作の段階からメディアで取り上げていただけたことも、うれしかったです。
―反響はいかがでしたか?
【藤澤】びっくりするほど、お問合せがありました。そのとき、アルケリスは医療業界に限らず、工場作業者や警備員、料理人の方など「世の中で立ち仕事をしている多くの方の助けになるかもしれない!」と、強く感じたんです。
2014年からスタートしたアルケリスの開発は、試作14号機目を経て、無事に製品化へとたどり着きます。そして2018 年、ついにアルケリスの販売がスタート! 「世界から立ち仕事のつらさをなくす」をミッションに掲げ、2020年にはニットーの一事業部からスピンオフし、アルケリス株式会社が誕生しました。
―アルケリスは、今後どのように進化してゆくのでしょうか。
【藤澤】医療分野が開発のきっかけとなったアルケリスですが、その後、さまざまな分野で使用していただけるようになりました。特に高齢の方が活躍しているような現場では、「立ち仕事の負担が軽減されて本当に助かっています」といった声も頂いています。これからも皆さまのニーズに応えられるよう、開発にもより一層力を注いでゆきたいですね。
(取材・文/小林 真由美)
▶【ハマ街ビト】本編もお楽しみください。
【ハマ街ビト】本編P6はこちらから
【ハマ街ビト】本編P7はこちらから
アルケリス株式会社のホームページはこちらから
LTR通信の誌面(本編/LTR通信の2024春夏号P6–P7)では、自社における組織づくりのポイントや、人材育成をする上で大事にしていることなどをお聞きしました。
こちらの番外編では、2014年から開発を進め、2018年に販売をスタートした「archelis(アルケリス)」(立ち仕事の負荷を軽減する、電源不要のアシストスーツ)について、詳しくご紹介します。
▶アルケリス株式会社
『自社の強み』を生かし、試作1号機を製作!
【藤澤】千葉大学フロンティア医工学センター(当時)の川平 洋先生より、「長い時間、立った姿勢で手術をする医師の負担を軽減したい」と相談を受けたんです。その日から一人の技術者として、“皆さんの助けになりたい”という強い想いが湧き、開発を進めることになりました。
株式会社ニットー代表取締役/アルケリス株式会社代表取締役CTO
藤澤 秀行さん
藤澤 秀行さん
―医療業界は、藤澤さんが今まで携わってきた分野とは異なりますよね? 不安な面もあったのではないでしょうか。
【藤澤】はい。医療に関わる開発の経験もゼロですし、「はたして私にできるのか……」という気持ちもありました。そんな中とても有難かったのは、現場(手術)経験がある川平先生からアドバイスをもらえたこと。先生は、実際に内視鏡外科医として手術も手掛けていた方なので、具体的な課題を分かりやすく伝えていただけました。
―それは心強いですね。
【藤澤】手術では、長いと10時間も立ったままの姿勢となります。でも、それを改善するような器具はありませんでした。手術室の中は機器やコード類がある上、移動もするので椅子を置くのも難しい。そこで、 “身につけて歩ける椅子”という発想に至りました。
―なるほど!
【藤澤】現場をよく知る川平先生ならではの発案です。そこから、自社の強みでもある『一貫生産体制』を生かし、試作1号機を作りました。
©アルケリス株式会社
開発が進む中で、立ちはだかる”壁”
―社内では、どんなチーム体制で取り組んだのでしょうか?
【藤澤】試作段階ということもあり、基本的に私がメインで動きましたが、加工に関しては各部門で行いました。企画やアイデア出しについては、開発が好きなメンバーに声をかけ、サポートしてもらった形です。
―皆さんそれぞれ得意分野があり、各パートを任せられるのは“ニットーさんならでは”ですね。
【藤澤】その点は、大いに生かせたと思います。ただ実際に開発が進むと、あらゆる問題点が生じ予想以上に大変でした。たとえば、装着する人の体型や装着感の良し悪しには、個人差があります。ある人は『フィット感が良い』と思っても、別の人は違和感を覚えることもあり、計測の難しさも痛感しました。また人の関節の動きは複雑で、動きをさまたげない関節構造の構築も、非常に難しいものでしたね。
―それらの“壁”を、どのように乗り越えていったのでしょうか?
【藤澤】とにかく、『試作品を作り装着してもらう』の流れを繰り返しました。より多くの方に装着してもらえれば、フィードバックの数も増えます。それらを開発に生かしながら、製品の質を少しずつ上げていった形です。
©アルケリス株式会社
メディアでの反響で感じたアルケリスの可能性
―開発で大変な日々の中、藤澤さんの原動力となったのは?
【藤澤】いくつかありますが、身近で支えてくれたチームメンバーの存在は大きかったですね。アルケリスに関わっていないメンバーでも、打開策のアイデアを出してくれたり、すぐ形にしてくれるなど率先して動いてくれることもありました。
―やはり皆さんは、“ものづくり”に対して熱い想いを持っているんですね。
【藤澤】そうですね。そのおかげで試行錯誤を繰り返しながらも、私自身“ものづくり”の楽しさは忘れず、最後まで挑み続けることができました。また、試作の段階からメディアで取り上げていただけたことも、うれしかったです。
―反響はいかがでしたか?
【藤澤】びっくりするほど、お問合せがありました。そのとき、アルケリスは医療業界に限らず、工場作業者や警備員、料理人の方など「世の中で立ち仕事をしている多くの方の助けになるかもしれない!」と、強く感じたんです。
メディアでの反響に「アルケリスの可能性を感じた」と話す藤澤さん
2014年からスタートしたアルケリスの開発は、試作14号機目を経て、無事に製品化へとたどり着きます。そして2018 年、ついにアルケリスの販売がスタート! 「世界から立ち仕事のつらさをなくす」をミッションに掲げ、2020年にはニットーの一事業部からスピンオフし、アルケリス株式会社が誕生しました。
―アルケリスは、今後どのように進化してゆくのでしょうか。
【藤澤】医療分野が開発のきっかけとなったアルケリスですが、その後、さまざまな分野で使用していただけるようになりました。特に高齢の方が活躍しているような現場では、「立ち仕事の負担が軽減されて本当に助かっています」といった声も頂いています。これからも皆さまのニーズに応えられるよう、開発にもより一層力を注いでゆきたいですね。
(取材・文/小林 真由美)
▶【ハマ街ビト】本編もお楽しみください。
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