LTR通信
2022年12月19日 [LTR通信]
【ハマ街ビト】 (番外編) 〜ビジネスに役立つ仏教の教え〜
LTR通信2023新春号本誌の<ハマ街ビト>では、LTRと「ビジネス交流会Lカフェ」の企画立案・運営に携わってくださっている石田ご住職(南区/久保山光明寺)に人生、そしてビジネスに必要な考え方などを<仏教的な視点>からお書きいただきました。
石田ご住職は、お寺の経営に関する講義なども定期的に行っています。経営理念や志と核の部分は同じにしながら、時流に合わせて事業戦略を見直し、組織を変革してゆく……。分野は異なるものの、共通している部分もあるのではないでしょうか。
また石田ご住職は、インド仏教の研究者としての顔もお持ちです。住職を務める傍ら大学で教鞭を執り、研究機関で研究職に従事されています。
それらを踏まえ、こちらの番外編では<ビジネスに役立つ仏教の教え>をテーマに、引き続き石田ご住職によるコラムを掲載いたします。ぜひご一読ください!
▶【ハマ街ビト】本編もお楽しみください。
【ハマ街ビト】本編はこちらから
今度は研究者として、ビジネスに役立つ仏教の教えを考えてみます。まず、仏教の教えを簡単に確認しましょう。第一は「苦しみは欲望から生まれる、欲望がゼロになれば苦しまない」、第二は「関係性が大事」、最後は「手放すと楽になる」です。
第一の視点は、自分の欲望のため、たとえばお金持ちになりたい、有名になりたいということが仕事のモチベーションであれば、苛立ちや不安を感じる機会が多くなることを意味します。その反対に、自分の欲望のためではなく、誰かを幸せにするため、世の中をよくするためにという思いで働けば、喜びや安心を感じる機会が増すことでしょう。
自分のためにという視点を捨てて、相手のためにという思いを持つことで、仕事はより楽しくなります。良い仕事は相手を喜ばせ、それは自分の喜びにもなることでしょう。
第二の視点は、人間関係を考えるときに大切です。酢豚のパイナップルが苦手という人がいます。その人は酢豚もパイナップルも好きなのですが、二つがセットになると嫌いになります。人間関係も同じで、相性が悪いということがあります。
嫌な相手と会ったら組み合わせが悪いと思うようにして、自分や相手を責めるのはやめましょう。こうすれば、人間関係のストレスを軽減して働くことができます。
苦手な相手がお客さまのときは、担当を見直したり、信頼できる同業他社にまかせるのも一つの手段です。相手にも自分にもベストな選択をすることは、結果的により大きな利益を生み出すはずです。
最後は、仕事にも人生にも通じるものです。仏教は手放すことを何よりも大事にします。お寺にお参りに行って、お賽銭を投げた経験を持つ方は多いでしょう。普段の生活でお金を投げることは許されません。しかし、お賽銭のときはお金をぽいっと賽銭箱に投げ入れます。これは、お金という大事なものを手放す練習です。
ものを抱えれば抱えるほど心と体は重くなり、不自由になります。逆にさまざまなものを手放すことで、自由は大きくなります。抱え込まずにシェアすること、思い切ってあきらめることで、良い結果につながることもあるはずです。苦しいときは、抱え込みすぎていないかをチェックして、少し荷物を手放すようにしましょう。
仏教は、自由に楽しく生きるための教えです。仕事でストレスが大きい方、不安や苛立ちを感じやすい人にこそ、仏教は役立つものです。仏さまの教えにより、読者の皆さまがより楽しく仕事をする助けになれば、幸いです。(久保山光明寺住職 石田 一裕)
1981年生まれ。北海道のお寺に生まれ、高校卒業後、元全日本仏教会理事長の白幡憲佑氏に弟子入りし、久保山光明寺にて修行。大正大学大学院仏教学研究科博士課程修了、博士(仏教学)。現在、浄土宗総合研究所研究員、大正大学非常勤講師を務める。僧侶としては、都内寺院での勤務、副住職を経て、2022年より久保山光明寺住職。専門はインド部派仏教研究。著書に『お坊さんはなぜお経を読む?』など。
【Twitter】 @lokottara
横浜市南区庚台にある浄土宗寺院で、明治時代に吉田茂首相の養父である吉田健三が中心になって建てられました。境内には国指定登録有形文化財である書院、また横浜市の指定文化財である木造菩薩立像(通常非公開)、木造地蔵菩薩坐像(どなたでもお参りできます)などがあります。
【ホームページ】 久保山光明寺HP
【Twitter】 久保山光明寺Twitter
【Instagram】 久保山光明寺Instagram
石田ご住職は、お寺の経営に関する講義なども定期的に行っています。経営理念や志と核の部分は同じにしながら、時流に合わせて事業戦略を見直し、組織を変革してゆく……。分野は異なるものの、共通している部分もあるのではないでしょうか。
また石田ご住職は、インド仏教の研究者としての顔もお持ちです。住職を務める傍ら大学で教鞭を執り、研究機関で研究職に従事されています。
それらを踏まえ、こちらの番外編では<ビジネスに役立つ仏教の教え>をテーマに、引き続き石田ご住職によるコラムを掲載いたします。ぜひご一読ください!
▶【ハマ街ビト】本編もお楽しみください。
【ハマ街ビト】本編はこちらから
“自分のために”の視点から、“相手のために”へ
今度は研究者として、ビジネスに役立つ仏教の教えを考えてみます。まず、仏教の教えを簡単に確認しましょう。第一は「苦しみは欲望から生まれる、欲望がゼロになれば苦しまない」、第二は「関係性が大事」、最後は「手放すと楽になる」です。
第一の視点は、自分の欲望のため、たとえばお金持ちになりたい、有名になりたいということが仕事のモチベーションであれば、苛立ちや不安を感じる機会が多くなることを意味します。その反対に、自分の欲望のためではなく、誰かを幸せにするため、世の中をよくするためにという思いで働けば、喜びや安心を感じる機会が増すことでしょう。
自分のためにという視点を捨てて、相手のためにという思いを持つことで、仕事はより楽しくなります。良い仕事は相手を喜ばせ、それは自分の喜びにもなることでしょう。
人間関係のストレスを軽減して働くには……?
第二の視点は、人間関係を考えるときに大切です。酢豚のパイナップルが苦手という人がいます。その人は酢豚もパイナップルも好きなのですが、二つがセットになると嫌いになります。人間関係も同じで、相性が悪いということがあります。
嫌な相手と会ったら組み合わせが悪いと思うようにして、自分や相手を責めるのはやめましょう。こうすれば、人間関係のストレスを軽減して働くことができます。
苦手な相手がお客さまのときは、担当を見直したり、信頼できる同業他社にまかせるのも一つの手段です。相手にも自分にもベストな選択をすることは、結果的により大きな利益を生み出すはずです。
ものを抱えれば抱えるほど不自由に?
最後は、仕事にも人生にも通じるものです。仏教は手放すことを何よりも大事にします。お寺にお参りに行って、お賽銭を投げた経験を持つ方は多いでしょう。普段の生活でお金を投げることは許されません。しかし、お賽銭のときはお金をぽいっと賽銭箱に投げ入れます。これは、お金という大事なものを手放す練習です。
ものを抱えれば抱えるほど心と体は重くなり、不自由になります。逆にさまざまなものを手放すことで、自由は大きくなります。抱え込まずにシェアすること、思い切ってあきらめることで、良い結果につながることもあるはずです。苦しいときは、抱え込みすぎていないかをチェックして、少し荷物を手放すようにしましょう。
仏教は、自由に楽しく生きるための教えです。仕事でストレスが大きい方、不安や苛立ちを感じやすい人にこそ、仏教は役立つものです。仏さまの教えにより、読者の皆さまがより楽しく仕事をする助けになれば、幸いです。(久保山光明寺住職 石田 一裕)
石田 一裕(いしだ・かずひろ)
1981年生まれ。北海道のお寺に生まれ、高校卒業後、元全日本仏教会理事長の白幡憲佑氏に弟子入りし、久保山光明寺にて修行。大正大学大学院仏教学研究科博士課程修了、博士(仏教学)。現在、浄土宗総合研究所研究員、大正大学非常勤講師を務める。僧侶としては、都内寺院での勤務、副住職を経て、2022年より久保山光明寺住職。専門はインド部派仏教研究。著書に『お坊さんはなぜお経を読む?』など。
【Twitter】 @lokottara
浄土宗久保山光明寺
横浜市南区庚台にある浄土宗寺院で、明治時代に吉田茂首相の養父である吉田健三が中心になって建てられました。境内には国指定登録有形文化財である書院、また横浜市の指定文化財である木造菩薩立像(通常非公開)、木造地蔵菩薩坐像(どなたでもお参りできます)などがあります。
【ホームページ】 久保山光明寺HP
【Twitter】 久保山光明寺Twitter
【Instagram】 久保山光明寺Instagram